2019年12月3日火曜日

和訳 In The Closet





「In The Closet」は、アルバム『デンジャラス』から3番目にシングルカットされた曲。

それまで好きだーー!という気持ちをなぜか必死で抑えてきた私が、ついにマイケルに完落ちした記念の曲。

当時この曲のアレンジが何種類も収録されたCDが3枚あって、一日中そればっかり聴いているうちに、これまでどうしても完全には拭いきれなかったマイケル「ダサい説」がボロボロと崩れ落ち、あの素晴らしく美しいSFに躊躇なく「カッコイイっーーー!!!」と言えるようになったんですよね(遅っ)

ところで、これはマイケルの曲にはめずらしくエロい曲なんですが、でもR&Bって、基本的にエロい曲ばかりですよねw

最近は無宗教者の比率も高くなったアメリカですが、かつては国民の80%がクリスチャンで、中でもプロテスタントの比率が高かったのですが、同じプロテスタントでも、黒人が多く通う教会と白人の教会には大きな違いがあって・・・

奴隷としてアメリカ大陸に連行された黒人は、苦しい状況の中で、音楽によって神を賛美し、言語を剥奪された彼らは、福音(ゴスペル)に救いを求めた。その後ゴスペル(福音音楽)は、リズム・アンド・ブルース(R&B)へと発展し、徐々により都会的な音楽へと変化していったのですが、

黒人の宗教観には、愛と性は分離できないもので、SEXの快楽の中にも神の恵みを感じるということがあり、R&Bにエロい歌詞が多い理由でもあるんですが、それは、性欲や快楽を悪とみなし、禁欲に価値を見出す白人プロテスタントの宗教観とは相容れず、白人の黒人への差別にも繋がっていた。

黒人と白人が聴く音楽が異なっていた背景には、そういった宗教や文化の違いといった要因もあったんですね。

エルヴィス・プレスリーが黒人音楽を取り入れ、ビートルズやストーンズもそこから大きな影響を受け、80年代には、マイケルやプリンスといったティーンエイジャーの白人にも受け入れられる黒人スターが登場したことで(音楽における)「人種の壁」がなくなったと言われたわけですが、

愛と性を分離しないという、これまでの黒人スピリットを踏襲していたプリンスの大ヒットアルバム『パープルレイン』には、相当際どい歌詞もあり、娘が聴いていた曲の内容に驚いた、当時の副大統領の妻ティッパー・ゴアは、卑猥な表現のある歌詞の曲を排除するための委員会を設立し、その結果、R&Bのアルバムにはほとんど「ペアレンタル・アドバイザリー」というステッカーが貼られることになりました。

アルバム『スリラー』や『バッド』に、エロい歌詞がなかったのは、マイケル自身の個性や、当時の彼の宗教の教義だけではなく、白人リスナーを取り込むための「戦略」でもあったと思います。






「In The Closet」の話に戻りますが、

In The Closet には、自己の真の姿を隠すといった意味があり、同性愛を秘密にしているというスラングにもなっていたため、マイケル自身の恋愛について想像をかき立てられるタイトルではあるんですが、ここで表現されているのは、マイケル自身の “秘密” ではありません。

愛や平和のメッセンジャーというイメージが強いマイケルですが、実はいわゆる “ラブソング” といえる曲は少なく、この曲も、 “女性から男性への欲望” は隠さないで欲しいけど、ふたりの関係は “秘密” にして欲しい・・といった内容ww

ラブソングのような甘さがなく、どこか殺伐として、多くの人が愛とは無関係に求める快感への欲望。でも、踊りたいと思う気持ちに理由がいらないように、「そこが疼けば、愛撫が必要」なのに、人々は、それを隠している(In The Closet)





艶かしい女性の声は、ショートフィルムでは共演者のナオミ・キャンベルですが、発売当時はミステリーガールとして名を伏せられていたCDの女性の声は、女優からモナコ公妃になったグレース・ケリーの3人の子供の末っ子である、ステファニー公女。

グレース公妃が亡くなった自動車事故の際に同乗していた彼女は、10代の頃から数々の男性との噂が報じられるなどゴシップ雑誌を賑わすことも多く、当時は、公室のボディガードと未婚のまま2人の子供をもうけたことも話題になっていました。

聴き比べてみると、セレブリティで白人のステファニーの方が、より「エロい」という点も人種への偏見と戦ったマイケルの戦略でもあり、また、R&Bの定番という意味での “王道” ではなく、永遠のKING OF POPによる、これまでにない感覚をもつ “覇道” の「エロさ」というか・・・

とにかく色々と「感じてしまう」曲ですよね!






In The Closet

Written by Michael Jackson, Teddy Riley

[Spoken Intro : Princess Stephanie of Monaco]
There's something I have to say to you
If you promise you'll understand
I cannot contain myself when in your presence
I'm so humble
Touch me
Don't hide our love
Woman to man

[ステファニー皇女]
あなたに言わなくちゃ
わかってくれるって約束してくれるわよね
あなたの前では、自分を抑えることができなくて
私は触れられることを
卑しく求めてる
ふたりの愛は隠せない
女から男への欲望も

[Michael Jackson]
She just a lover(*)
Who’s doing me by
It's worth the giving
It's worth the try
You cannot cleave it
Or put it in the furnace
You cannot wet it
You cannot burn it

[マイケル]
彼女はいわゆる愛人(*)
僕が求めたことを与えてくれる
試してみよう
引き裂こうとしたり
無理やり押し込もうとするんじゃなくね
濡れなければ
燃えることはできない

She wants to give it
(She wants to give it
(Ahh she wants to give it)
Dare me
(She wants to give it)
(Ahh, she wants to give it)
She wants to give it
Yeah
(Ahh, she wants to give it)
(She wants to give it)
(Ahh she wants to give it)

彼女がそれを求めてる
彼女がそうしたがっているんだ
彼女が僕にしたいんだ
僕に挑むように
そう、彼女がそれを求めている
ああ、彼女が欲しがっているんだ

[Princess Stephanie of Monaco]
One thing in life you must understand
The truth of lust, Woman to man
So open the door and you will see
There are no secrets
Make your move
Set me free

人生の中でひとつ理解しておくことは
女も男への欲望があるってこと
そう、扉を開けてみればわかるはず
隠すことなんてない
あなたがしたいように
私を自由にして

[Michael Jackson]
Because there's something about you baby
That makes me want to give it to you
I swear there's something about you baby
That makes me want
Just promise me whatever we say
Or do to each other
We make a vow for now to just
Keep it in the closet

ベイビー、君にはなにか魅力があって
だから僕はその気になってしまうんだ
間違いない、君はなにか魅力があって
それで僕はその気になってしまうんだ
約束して
僕たちが話したことやしたことを
今は僕たちだけの秘密にすると

[Michael + Princess Stephanie]
If you can get it
It's worth a try
I really want it
I can't deny
It's just desire
I really love it

もし、それを君がわかってくれるのなら
試してみる価値がある
僕は本当にそうしたいし
拒むことなんてできない
それは、まさに欲望
そういうのが好きなんだ

'Cause if it's aching
You have to rub it

そこが疼いたのなら
愛撫が必要なのよ

[Michael Jackson]
She wants to give it
(She wants to give it)
Ahh she wants to give it)
Dare me
(She wants to give it
(Ahh she wants to give it)
She wants to give it
(She wants to give it Yeah)
(Ahh she wants to give it No No)
(She wants to give it)
(Ahh she wants to give it)

彼女がそれを求めてる
彼女がそうしたがっているんだ
彼女がそれを欲しがっている
僕に挑むように
そう、彼女がそれを求めている
ああ、彼女が欲しがっているんだ

[Princess Stephanie of Monaco]
Just open the door and you will see
This passion burns inside of me
Don't say to me
You'll never tell
Touch me there
Make the move
Cast the spell

扉を開けてみれば、わかるはず
私の中に燃えるような情熱があることを
気がつかないなんて言わないで
私のそこに触れて
したいようにして
魔法にかけて

[Michael Jackson]
Because there's somethin about you baby
That makes me want to give it to you
I swear there's somethin about you baby
That makes me want to give it to you

ベイビー、君にはなにか魅力があって
それで僕はその気になってしまうんだ
間違いない、君にはなにか魅力があって
それで僕はその気になってしまうんだ

Just promise me whatever we say
Or whatever we do to each other
For now we will be making a vow, to just
Keep it in the closet

約束して
僕たちが話したことや、したことを
今は、僕たちだけの
秘密にすると

Because there's somethin about you baby
That makes me want to give it to you
I swear there's somethin about you baby

ベイビー、君には何かがあって
それで、僕はその気になってしまうんだ
本当だよ、君には何かあるよね・・・

Just promise me whatever we say
Or do to each other
We make a vow for now to just
Keep it in the closet

約束して
僕たちが話したことや、したことを
今は、僕たちだけの秘密にすると

訳:yomodalite)


(*)「あなたとマイケル・ジャクソンが殴り合いをしたらどちらが勝つ?」と記者に聞かれたとき、プリンスは、「マイケルは戦う人ではなく、愛する人だよ(Michael is not a fighter he is a lover)」と答えていて、それは、マイケルがポールとデュエットした『Girl Is Mine』(→ 和訳)での、”Paul, I think I told you. I'm a lover not a fighter” の引用で、


上記の素敵な記事の中でも、記者が下品な意味にとって笑ったと書かれているのですが、ただ一般的に「lover」は「愛する人」や、「愛に生きる人」「恋人」というような意味ではなく、「セックスフレンド」という意味合いが強く、マイケルもここではそういった意味で使っていると思います。

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ORIGINAL 2017.12.18をリライト
https://nikkidoku.exblog.jp/28889356/

2 件のコメント:

  1. スタサムとイン・ザ・クロゼットの歌詞見てきました。
    歌詞だけじゃなく、その背景を書いてくださるので理解を深めやすいです。
    イン・ザ・クロゼットってここまでエッチな歌詞だったんですね。英語ができないと恐ろしい。映像からのイメージで男女の駆け引きぐらいで想像してました。マイケルジャクソンにしてはとてもシンプルな装いで、髪を縛って、下着とスパッツ(ごめん)みたいな服で歌い踊るのが新鮮ですね。でもいつも思うのは、彼が女性と踊ってもあまりいやらしさがないのはなぜなんでしょうか?

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    1. ふみんさん、コメントありがとーー!
      コメントの仕方がわかりにくかったみたいで、
      何度もトライさせちゃってすみませんでした。
      もし、お時間があるようでしたら、再度、こちらへの返信も試してみてね!

      >マイケルジャクソンにしてはとてもシンプルな装い・・・

      ですよねー デンジャ期と言えば、ウネウネした前髪が顔の前に常に垂れ下がってましたからねー

      >彼が女性と踊ってもあまりいやらしさがない・・・

      マイケルだけでなく、ナオミも、あまりにもパーフェクトで、生身を感じさせないからなのかな。。ホントにMJって子供頃からアホほどモテまくってきたのに、35歳頃でさえ、オプラ・ウィンフリーに童貞なの?って質問されていたり、すごくセクシーでありながら、不思議と性的なことと無関係な感じがするんですよね。そんなことから、つまらない疑惑を掻き立てられたりもしちゃうんですけど・・・

      でも、セクシーなのに、いやらしくないって、つまり最高ぉーーってことですよねっ!

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