2019年11月13日水曜日

和訳 Tabloid Junkie




マイケルの素晴らしさは数え切れないのですが、私が最も尊敬している点は、

自分への批判を、素晴らしくカッコイイ曲にして返し、そして、何年経っても、その音楽が色褪せないだけでなく、メッセージさえも時代を超えて伝わること!

発売当時は、変人として扱われた天才による「自己主張が強く、怒りをストレートに表現し過ぎた」アルバムと評された『HIStory』は24年を経て、より多くの人に愛され、再評価されるようになっていますが、今回はそこから「Tabloid Junkie」を和訳します。

検索してみると、意外と和訳されている方が多かったのですが、タブロイドによって、どれだけマイケルが苦しめられたかについて、今ではファン以外にも知られるようになっているからなんでしょうね。

でも、よく言っていることですが、マイケルが書いた歌詞はどれも主語がとてもわかりにくく、彼は言葉をメッセージよりはサウンドとして。また並外れた読書家でありながら、文学的な表現を避け、流行りの主張にも乗らず、自分のアイデンティティよりも、世界中の人の気持ちを考え、時間も、人種も、国境も超えて感覚的に伝わる・・・といったことを重要視しているせいか、文章として意味が通じるようにするのが、逆に難しい箇所がいっぱいあるんですよね(それで毎回、何度も悩んでしまふ・・・)。

また、アメリカ国内での『ネバーランドにさよならを(LN)』の影響をウォッチされている方なら、すべてのマスメディアがタブロイド化していることや、「To read it sanctifies it(読むことで神聖化される)」とか「resurrect(死者を生き返らせる)」という言葉が、一層ビリビリと感じられるようになっているのでは?

私訳では、[Verse 2]の訳がもっとも他と異なる点が多いのですが、

1993年の疑惑のときも、マイケルを裏切った黒人は少なくありませんでしたが、( → 例:ジョセフィン・ゾーニーの発言 ) 、2019年でも、あれほど疑惑にまみれた被害者を神聖化した最大の功労者であるオプラ・ウィンフリー、そして、彼女の主張をすぐに受け入れたジョン・レジェンド、マイケルとのコラボ曲もある50セントの無礼な発言など、多くの有名黒人が『LN』に同調し、

黒人居住地区にあり、黒人アーティストのためのシアターとして輝かしい歴史をもつアポロシアターの最近放送された記念番組(LNと同じHBO製作)では、ジャクソン5を無視するというとんでもない事態さえ起きました。(アポロの取締役には、クインシー・ジョーンズや、ファレル・ウィリアムスもいたのに・・)

これを歴史の改ざんと言わずになんと言えばいいのかわかりませんが、マイケルがこのアルバムを『HIStory』と名付けたときの気持ちは、より一層熱く胸に響いてくるでしょう。

同じアルバムに収録された「They Don't Care About Us」でも、マイケルは「黒人が黒人を脅して仲間を刑務所へぶち込む」と歌っていますし( → 全和訳 )、自分の人種に誇りを持っているからこその、仲間への批判は、過去にも、今現在の状況にも当てはまると私は解釈しました。





Tabloid Junkie

[Verse 1]
Speculate to break the one you hate
Circulate the lie you confiscate
Assassinate and mutilate
(As) the hounding media in hysteria
Who's the next for you to resurrect
JFK exposed the CIA
Truth be told the grassy knoll(*1)
(As) the blackmail story in all your glory

気に食わない奴を陥れようと憶測をめぐらせ
嘘を集めては触れ回る
ヒステリックなメディアは獲物の周りを嗅ぎまわり
相手をズタズタにして殺す
次は誰を墓から引きずり出す?
ジョン・F・ケネディはCIAの正体を暴いた
ダラスの暗殺現場は真実を語っている
でも、君たちの名声はすべて恐喝まがいの物語

[Pre-Chorus]
It's slander
You say it's not a sword
But with your pen you torture men
You'd crucify the Lord
And you don't have to read it
And you don't have to eat it
To buy it is to feed it
So why do we keep fooling ourselves

すべて中傷さ
君は剣で刺したわけじゃないというけど
ペンの力で人を拷問にかけてる
君たちは神をも十字架にかけた
そんなの読まなくていいし
鵜呑みにしはいけない
買えば奴らを太らせるだけ
どうして、みんなこんな馬鹿なことを続けるんだ?

[Chorus]
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
Though everybody wants to read all about it
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual, actual
They say he's homosexual

雑誌で読んだから
テレビで見たからって
それを事実にしないで
みんな知りたくてしょうがないんだろうけど
ただ雑誌に書いてあったとか
テレビで見たからって
彼がホモセクシュアルだなんてことを
本当のことにしないで

[Verse 2]
In the hood(*2)
Frame him if you could
Shoot to kill
To blame him if you will
If he dies sympathize
Such false witnesses
Damn self-righteousness
In the black
Stab me in the back
In the face(*3)
To lie and shame the race
Heroine and Marilyn
The headline stories of
All your glory

ゲットーでは
やれる限り人を罠にかけ
お前が悪いからだと
人を撃ち殺し
彼が死ねば同情してみせる
ニセモノの目撃者と
独りよがりの正義
黒人社会の中で
僕は背後から刺された
面と向かって嘘をつくなんて、人種の恥だね
ヘロインとマリリン・モンローとか
そんな見出しの記事が
君たちの栄光のすべて

[Pre-Chorus]
It's slander
With the words you use
You're a parasite in black and white(*4)
Do anything for news
And you don't go and buy it
And they won't glorify it
To read it sanctifies it
Then why do we keep fooling ourselves

君たちが使ってる言葉は
すべてが誹謗中傷
黒白分けることを商売にして
ニュースのためならなんだってする
そんなの買うことない
みんなでそれを称賛しなくていい
読まれることで神聖化されてしまう
それなのに、みんないつまでこんな馬鹿なことを続けるんだ?

Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
Everybody wants to read all about it
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
See, but everybody wants to believe all about it

雑誌で読んだから
テレビで見たからって
事実だと思っちゃいけない
みんな知りたくてしょうがないんだろうけど
ただ雑誌に書いてあったからって
テレビで見たからって
信じちゃいけない
でも、みんなそういうの信じたいんだよね

[Chorus]
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
See, but everybody wants to believe all about it
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual, actual
She's blonde and she's bisexual

雑誌で読んだから
テレビで見たからって
事実だと思っちゃいけない
みんな知りたくてしょうがないんだろうけど
ただ雑誌に書いてあったからって
テレビでやってたからって
彼女はブロンドでバイセクシュアルだとか
事実じゃないのに、本当のことにしないで

[Pre-Chorus]
Scandal
With the words you use
You're a parasite in black and white
Do anything for news
And you don't go and buy it, buy it
And they won't glorify it
To read it sanctifies it
Why do we keep fooling ourselves

君たちは言葉を駆使して
スキャンダルを作る
黒白分けることに固執して
ニュースのためならなんだってする
そんなの買うことないし
みんなでそれを称賛しなくていい
読まれることで神聖化されてしまう
一体いつまでこんな馬鹿なことを続けるつもり?

Slander
You say it's not a sin
But with your pen you torture men
But why do we keep fooling ourselves

君たちは人を罵ってばかり
それは罪じゃないって言うけど
ペンの力で人を拷問にかけてる
なのに、みんないつまでこんな馬鹿なことを続けるつもり?

[Chorus]

Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
Though everybody wants to read all about it
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
See, but everybody wants to read all about it

雑誌で読んだから
テレビで見たからって
事実だと思っちゃいけない
みんな全部知りたくてしょうがないんだろうけど
雑誌に書いてあったからって
テレビで見たからって
事実にしないで
でも、みんな読みたくてしょうがないんだよね

[Chorus]

Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual
Just because you read it in a magazine
Or see it on the TV screen
Don't make it factual, actual
You're so damn disrespectable

雑誌で読んだから
テレビで見たからって
事実だと思っちゃいけない

雑誌で読んだからって
テレビで見たからって
事実だと思っちゃいけない
雑誌で読んだからって
テレビで見たからって
事実じゃないし、本当のことにしないで
君たちは本当に最低だよ

(訳:yomodalite )


(*1)grassy knoll 

JFKが暗殺された場所の名前で「草が・・」ではないと思います。

(*2)In the hood 

CD訳では、Neighborhood(近所)などの意味から「近くに来て」となっていますが、黒人スラングの「hood」(地元)が意味する光景は、プロジェクトと呼ばれる低所得者向けの団地が建て並ぶ、治安の悪い地域のこと(ここでは語感からゲットーを選択)。メディアでは白人警官が黒人を・・というニュースばかりが大きく取り上げられますが、黒人同士の事件が絶えないのも事実です。

(*3)In the face

黒人社会では、
僕を後ろから刺す
(公然と)顔のことで
嘘を並べ、人種を侮辱する(youtubeより)

といった訳の方が正しいのかもしれませんが、In the black(黒人社会)~、In the face~という流れから、私は別訳を選択しました。

(*4)You're a parasite in black and white

black and white は、CD訳では「紙面」で、印刷物と解釈した訳も見かけましたが、この曲の時代の新聞雑誌のカラフルなイメージにそぐわないですし、マイケルはそういう言い方はしないと思います。ニュースの多くは「黒と白に寄生」していて、それは、黒人と白人の肌の色だけでなく、あらゆることで人々をカテゴライズし、黒(完全悪)と白(完全正義)を作り出すことに寄生しているということではないでしょうか。

※この記事は下記から移動したものです。



6 件のコメント:

  1. 24年前に世に出されたこの曲は、発表以来今に至るまでずっと「的を射て」いて、この後も私たちは、素敵な音楽にのったマイケルの言葉を苦くかみしめることになるのだろうなぁと、yomodaliteさんの訳詞を読みながら感じました。いまは、「雑誌で読んだからって、テレビで見たからって」にプラス「ネットで見たからって」になるんでしょうけど。メディアの選択肢が増えたって、私たちが賢くなるわけではないような気がします。

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  2. そーだよね。でも、マイケルはみんなが賢くならないってことさえも解ってたみたい。色々弁解しなかったことも、今どきの「炎上上等」みたいなタレントとは、全然違うよねー!

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  3. アルバム「History」大好きなんです。
    好きな曲がいっぱい。
    特に”Tabloid Junkie”は音が最高にスリリングで気持ちいい。
    出だしのゴシップニュースを読む声から動物園のゾウらしき鳴き声、
    サビのコーラスのハーモニーは体中に広がって快楽です。
    オルテガさんでしたっけ、マイケルの音楽は建築物みたいに構築されている、と言うのを
    どこかで読んだような聞いたような気がするんですが、
    聴いてる感覚として、それすごく頷けるんですよね。
    私は音楽の専門家ではないし作曲するわけでもないですが、
    様々な音の響き、重ね方、距離感というものを凄く計算して創っているのかなと思います。

    >彼は言葉をメッセージよりはサウンドとして。また並外れた読書家でありながら、文学的な表現を避け、流行りの主張にも乗らず、
    自分のアイデンティティよりも、世界中の人の気持ちを考え、時間も、人種も、国境も超えて感覚的に伝わる・・・

    そうですね!言葉をサウンドとしてというところ、凄くそう思います。
    だからまず、本能を直撃してくる。意味を理解する前に体に入り込む。
    そうして一周回ってメッセージを知る。

    20年も前に書かれたこの曲の痛み、怒り、悲しさを、いまだに味わわなければならない世界。
    でも”Square One ”のような活動、表明もあるわけですから、絶望しないでいたいと思います。
    いつもありがとうございます。(2019-11-16 14:55)

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    1. >本能を直撃してくる。意味を理解する前に体に入り込む。
      そうして一周回ってメッセージを知る。

      同感!ホントそのとおりだよね!!!!

      >絶望しないでいたいと思います。

      LNを拒否した中国では、”Square One” の大上映会が行われてるし、腐った米マスメディアが、ダサいアーティストに脅しをかけたり、ご褒美あげたりとか、MJMuteだなんて騒いでも、先に消える方はどっちかなんて目に見えてるもんね!

      今回のことで、まさかこの人に裏切られるとは!と絶句した人も多かったけど、初めてMJディフェンダーだってことがわかった人もたくさん発見できたり、前々から嫌いだった人の「やっぱり」という証拠が見つかったりと、ホント、こんなカッコイイ曲を遺してくれただけでなく、色んなことを教えてくれるよねーー私たちのKINGは!

      スヌープドッグのインスタ
      https://www.instagram.com/p/B43scRGnbxT/

      「やっぱりの代表w」ジョン・レジェンド(おえっーーー)が、今年のセクシー男No.1に選ばれた(腐った発言へのご褒美)あとのやつ
      https://www.instagram.com/p/B40KIcnnLPo/

      (2019-11-17 12:59)

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    2. >先に消える方はどっちかなんて目に見えてるもんね!

      全くその通りで、MJはそれを知り尽くし、考え尽くしていたのではないかと思います。だからどんな理不尽な目に遭っても、公に誰かを悪く言わなかった(オールレッド除くw)。

      「やっぱり」の代表の彼については、そもそも自分にレジェンドなんて名前付けるか?(本名はスティーブンスStephensですよね)と、かねてより首をひねっていたのですが、彼が今年のSexiest Man AliveとしてPeople誌の表紙を飾ったと知ったときは、「ハアァーッ?!」と、あやうく電車の中で叫びそうでした。なんか、後ろから「膝カックン」食らった気分。
      欧米でハンサムやセクシーだと人気がある人が、自分の好みと全然違うことはままあるのですが、彼が「生きている男の中で最もセクシー」って考える人がそんなにいるって、どう受け止めていいかわからなくて・・・。なので、Snoop Doggがやってくれたことにとっても納得。私は、Snoop Doggの方がセクシー!に全額賭けます♪
      sexyって、もっとも「忖度」が割り込んじゃいけない分野だと思うんですけど…。
      もひとつおまけの口直しwに、ダイアナとマイケルが互いをsexyと呼んでいる以下の動画を見ることにします。眼福、眼福。

      https://www.youtube.com/watch?v=avtm114bdBo

      (2019-11-19 17:43)

      削除
    3. ダイアナとマイケルはホントにキラキラがよく似合うし、ふたりとも、同性からも異性からも人生すべてでモテ期だったよねー!

      それに引き換え・・・

      ラ・ラ・ランドでも中途半端な悪役がお似合いだった彼がセクシーだったことなんか1度もなかったけど、よりによってなんで今年なわけ? 

      彼をNo.1にしたのは、 男に性的魅力を感じない人たちの選択と圧力があったとしか思えないなぁ。。

      あと、レディ・ガガは何の反応もしなかったけど、PINKのミュンヘンのライブでは、自分に影響を与えた人物として、Michael Jackson の名前を、背後の大きなスクリーンに映しだしてくれたんだよね!

      これまで、特に好きだと意識したことなかったけど、今後は、PINK姐さんと呼ばせてもらいます!

      (2019-11-20 21:18)

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